「NAM」というプロジェクト・「NAMコイン」を知っていますか。
NAMとは、AIとブロックチェーンの技術を活用によって日本の医療が抱える問題を解決しようとする、日本発のプロジェクトのことです。
NAMコイン(NAMトークン)とは、NAMプロジェクトを進める資金調達のために行われたICOで配布されたトークンのことです。この先、NAMによる各種サービスでの利用が予定されています。
今回は”日本の医療に革命を”と謳う野心的なプロジェクト、NAMについて詳しく見てみましょう。
AI・ブロックチェーン技術を活用することでどのような革命を医療にもたらすことができるのでしょうか。
目次
実現されるサービス
NAMがもたらそうとしているサービスについて紹介します。
NAMが目指すもの
NAMは以下3つの実現を目指しています。
- AIを利用し、医師による患者の経過の完全な把握を可能にする
- ブロックチェーンを利用し、低コスト・安全な電子カルテシステムを作成する
- AIクリニックによって、世界の最先端の治療・検査を提供する
なお、CEOの中野哲平氏は大学時代「日本の医療を救う電子カルテ検索システムの開発」というテーマで研究を行い、経済産業省所管IPAのIPA未踏事業に採択されています。
(参考:「AIとブロックチェーンで医療に衝撃を」:日経デジタルヘルス)
NAMコインでできるようになること
NAMコインで以下3種類のサービスを受けられるようになる、と言われています。
- 問診
- 病気の予測
- 体調管理
(参考:株式会社NAM Asia Hong KongのICOに関する説明動画)
他にも、医療機関の決済・送金、ヘルスケアに関連するクラウドファンディングによる資金調達などにもNAMコインは活用されていく予定です。
(参考:NAMホワイトペーパー)
保険証にNAMコインのウォレットを内蔵するといったアイデアや、「NAM Pay」という仮想通貨決済サービスも公表されています。
「医療系サービスの支払いはNAMコインで」といった「医療経済圏」の創造を狙っているようですね。
具体的なサービス
NAM社が実現を目指す医療業界向けAIサービスは以下の5つです。
※開発中・準備中のものも含まれます。
1. 問診ボット「ドクターQ」(人工知能を利用)
ドクターQは「チャットボット付きカルテ」として開発されています。LINE上でチャットボットによる問診を受けられるだけでなく、カルテや過去の服薬履歴を閲覧することも可能です。
>> ドクターQのLINE
また、医師側は、ドクターQによって患者の経過把握、カルテの閲覧が可能となります。
チャットボット経由で患者とコンタクトを取れるため、患者の継続受診率の向上にも繋がります。
2. 疾患予測モデル「NAMインスペクション」(機械学習を利用)
患者の遺伝子データや血液検査データを元に疾病リスクを予測します。
「○年後に▲の確率で□病になります」といった、これまでよりも詳細な予測を機械学習技術を活用して実現します。
※機械学習とはデータから結果を予測する手法のことです。近年話題になっているディープラーニング(深層学習)も機械学習の一種です。
3. 健康食品推薦サービス「NAMヘルス」(人工知能を利用)
人工知能による問診データを元に、個々人に合った薬や健康食品を推薦するサービスです。
また、サービスの支払いにはNAMコインを利用します。
4. 次世代カルテシステム「NAMカルテ」(深層学習とブロックチェーンを利用)
以下の4つをAIが自動で行う機能付きの次世代カルテシステムを開発しています。
- 医師・患者の会話からカルテを記載
- 過去情報を整理するため、カルテを要約
- 加算可能な保険点数を表示
- 診療報酬の請求の正しさを判断
ブロックチェーンを利用した電子カルテシステムの作成を目指しています。電子カルテのデータを書き換え不可能な形・低コストで保管・共有できるのは、ブロックチェーンならではと言えそうですね。
5. 医療法人NAM AIクリニックの開業
上述した4つの医療AIサービスを実践する「医療法人NAM AIクリニック」の開業を目指しています。
血液検査とゲノム検査を行うことで、世界中の最先端の論文を読み込んだAIが、患者さんの疾患リスクなどを全て割り出すことを可能にしている。
(引用元:NAM)
とのことですが、「全て」とは何を指すのでしょうか。疑問は残るものの、掲げる目標は壮大です。
NAMのサービス・ホワイトペーパー等から受ける印象
NAMのサービスやホワイトペーパー、公式サイトを見ていると
「掲げる目標は壮大。実現すれば便利だが、実際にどこまで可能なのか。」
という印象を受けます。
例えば、現在利用できるサービスとしてドクターQを利用してみると、完成度はまだまだ低いのです。
実際、チャットボットに「咳が止まらない」と送り、その後4つの「はい・いいえ」形式の質問に回答したところ、
「新規パターンです。学習中されます。」
という返事が返ってきました(日本語としても変です…)。
「よくありそうなシチュエーションなのに結果が分からないの?!」とがっかりしてしまいます。
また、回答中に返事が返ってこなくなる、といった不具合もありました。
「まだまだこれから」なのだろうと思われますが、現在身近に利用できるチャットボットの完成度がこれでは、掲げているビジョンと現実のサービスとの乖離の大きさを感じてしまいます。
ホワイトペーパー等で語られるビジョンは野心的で大きな期待を持たせるものです。NAMが目指すサービスが実現すれば医療が便利になることも確かでしょう。
将来的にNAMコインとブロックチェーンが医療にとってなくてはならないものとなれば、今よりもNAMコインの価値が上がるかもしれません。
一方、便利なサービスや電子カルテの導入などの実績が出ないままだと、期待が大きい分失望も大きくなるでしょう。
サービスが実現しないことにはNAMコインを利用することもできません。サービスが実現せずに頓挫する、ということになるとNAMがほぼ無価値になってしまう可能性もあります。
この先、1つ1つのサービスを着実に実現していってほしいですね。
まとめ
日本の医療に革命をもたらそうとしているNAMのサービスについて紹介しました。
掲げられているビジョンが実現すれば日本の医療が変わるかもしれません。まさに革命的でしょう。一方で、技術面や医療の現場との連携など、難しい部分もありそうです。
ハードルを乗り越え、サービスを展開していけるのか。今後のNAMの動向に注目です。
参考